2011年9月25日日曜日

内容証明郵便①

この記事では、まず内容証明がどのような用途で用いられるのかを書いていきます。
文例や送り方等は次の記事で。


<キーワード>
内容証明郵便 契約解除 クーリングオフ 損害賠償請求 時効


内容証明郵便とは、日本郵便が提供するサービスです。
内容証明郵便を使うことにより「この書面に書かれた内容が、間違いなく相手に渡された内容である」と証明できます(一通は郵便局に保管されます。一通は相手方に対し送付されます。一通は自分が控えとして保管します)。
そのような性質から、以下の様な用途で使われます。


(1)金銭債権を回収したい(時効の進行を止めたい)とき
金銭債権とは、金銭を貸した者が借り手に対してその返還を請求する権利のことです。債権には、商品代金、売掛金、賃金、貸金などが含まれます。
損害賠償請求に用いられる場合もあります。
また、権利は一定期間行使しないと時効により消滅してしまいます。
これを防ぐための請求にも使われます。


(2)契約を解除したいとき
契約解除の意思表示、特にクーリングオフをする場合に用いられます。

クーリングオフとは、無条件で申込みの撤回または契約を解除できる法制度です。
可能な期間は契約書や申込書などを受取った日から8日以内です(一部20日以内等もあり)。

クーリングオフできない場合もあります。主なものは以下のものです(個別にできる旨の指定がされている場合もあります。下記の10)がこれにあたります)。
1)通信販売で購入したもの
2)3,000円未満の商品で代金も支払い、商品もすべて受取った場合、
3)商品が消耗品で、全部または一部を消費した場合など

クーリングオフできる場合は以下のものです。
1)電話勧誘販売によるもの
2)訪問販売によるもの
3)マルチ商法によるもの
4)割賦販売、クレジット契約(店舗以外の場所での契約)
5)ゴルフ会員権(50万円以上の新規募集のもの)
6)保険契約(1年を超える保険期間のもの)
7)宅地建物取引(店舗以外の場所での契約)
8)海外先物取引(指定市場での指定商品に関する事業所以外での取引)
9)特定商取引法に定める指定役務の提供(経済産業省ホームページより)
・エステティックサロン
・語学教室
・家庭教師
・学習塾
・パソコン教室
・結婚相手紹介サービス
10)業務提供誘引販売取引(経済産業省ホームページより)
・販売されるパソコンとソフトを使用して行なう在宅ワーク
・販売される着物を着用しての展示会での接客
・販売される健康器具のモニター
・購入したチラシを配布する仕事 など


(3)金銭債権を譲渡したとき
前述の金銭債権は転売することもできます。
これを譲渡したことを債務者に通知しなければなりません。
その通知のためにも用いられます。

※これら以外に用いることができないというわけではありません

2011年6月23日木曜日

「退職する願い出る場合は○○日前まで」という規定を就業規則に設けることはできるか

<ケース>
A会社の就業規則には「退職する90日前までに願い出なければならない」旨の規定があった。
A会社に勤める期間の定めのない労働者であるBは退職の10日前に退職する旨を願い出たところ、上司であるCは上記規定を根拠に認めないと主張した。
このような定めは有効か。


<キーワード>
就業規則 退職 期限



労基法は、使用者が解雇する場合と異なり、労働者が退職する場合については何も定めていません。
よって、民法の一般原則に戻ってみると、期間の定めのない労働契約の場合、いつでも解約の申し入れをすることができ、申し入れから2週間が経過した時点で効果が生じるとされています(民法627条)。
ただし、月給者の場合は計算期間の前半において次期以降に対して解約申し入れできるということになってますので、この原則によるのは月給者以外ということによります。

では、就業規則で90日より前の願い出を規定することはできるでしょうか。
この点、民法627条を任意規定と解してこのような特約を有効と考える説がある一方で、同条を強行規定と解してこのような特約を無効とする裁判例もあります。
最高裁判例がいまだないため、有効か無効かについて確実な事は言えません。

実務的には、努力規定として設ける等業務に支障を与えないことを求める形で規定するのが妥当ではないかと思われます。

2011年6月22日水曜日

レジの金を横領したアルバイトを解雇したい場合

<ケース>
雇用期間の定めのないアルバイト店員であるAが勤務先のスーパーでレジの中の金を横領し、それが発覚した。
本人は反省しているが、事業主としては解雇したいと考えている。
解雇するできるか。また、解雇できるとするならばどのような手続が必要か。


<キーワード>
労働基準法 アルバイト 解雇 解雇予告 解雇予告除外認定



労基法上の解雇規制の基本的な事については別論にて。

労基法20条但書、21条は解雇予告を要しない場合について規定していますね。
すなわち、

①天災事変その他事業の継続が不可能となった場合
②労働者の責めに帰すべき事由による解雇

は労働基準監督署長の認定を受けることによって解雇予告を要せず即時解雇することができます。

このケースでは②に該当するかどうかが問題になりそうですね。

では、具体的にどのような場合に②に該当するのでしょうか。
行政解釈(厚労省の通達)によれば、

労働者の責めに帰すべき事由とは、まず原則として労働者の故意・過失またはこれと同視すべき事由であり、その者の地位や職責等を考慮の上総合的に判断して法20条の保護を与える必要のない程度に悪質であって、予告をさせることがその事由と比較して均衡を失するようなものを言う(昭23・11・11基発1637、昭31・3・1基発111)とされています。

具体的に認定すべき事由として例示されているものに、
「原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取・横領・障害等刑法犯に該当する行為」(前掲・通達)
が挙げられています。

以上から、本ケースの場合には、解雇予告除外認定を得ることで即時解雇することができることになります。