2011年6月23日木曜日

「退職する願い出る場合は○○日前まで」という規定を就業規則に設けることはできるか

<ケース>
A会社の就業規則には「退職する90日前までに願い出なければならない」旨の規定があった。
A会社に勤める期間の定めのない労働者であるBは退職の10日前に退職する旨を願い出たところ、上司であるCは上記規定を根拠に認めないと主張した。
このような定めは有効か。


<キーワード>
就業規則 退職 期限



労基法は、使用者が解雇する場合と異なり、労働者が退職する場合については何も定めていません。
よって、民法の一般原則に戻ってみると、期間の定めのない労働契約の場合、いつでも解約の申し入れをすることができ、申し入れから2週間が経過した時点で効果が生じるとされています(民法627条)。
ただし、月給者の場合は計算期間の前半において次期以降に対して解約申し入れできるということになってますので、この原則によるのは月給者以外ということによります。

では、就業規則で90日より前の願い出を規定することはできるでしょうか。
この点、民法627条を任意規定と解してこのような特約を有効と考える説がある一方で、同条を強行規定と解してこのような特約を無効とする裁判例もあります。
最高裁判例がいまだないため、有効か無効かについて確実な事は言えません。

実務的には、努力規定として設ける等業務に支障を与えないことを求める形で規定するのが妥当ではないかと思われます。

2011年6月22日水曜日

レジの金を横領したアルバイトを解雇したい場合

<ケース>
雇用期間の定めのないアルバイト店員であるAが勤務先のスーパーでレジの中の金を横領し、それが発覚した。
本人は反省しているが、事業主としては解雇したいと考えている。
解雇するできるか。また、解雇できるとするならばどのような手続が必要か。


<キーワード>
労働基準法 アルバイト 解雇 解雇予告 解雇予告除外認定



労基法上の解雇規制の基本的な事については別論にて。

労基法20条但書、21条は解雇予告を要しない場合について規定していますね。
すなわち、

①天災事変その他事業の継続が不可能となった場合
②労働者の責めに帰すべき事由による解雇

は労働基準監督署長の認定を受けることによって解雇予告を要せず即時解雇することができます。

このケースでは②に該当するかどうかが問題になりそうですね。

では、具体的にどのような場合に②に該当するのでしょうか。
行政解釈(厚労省の通達)によれば、

労働者の責めに帰すべき事由とは、まず原則として労働者の故意・過失またはこれと同視すべき事由であり、その者の地位や職責等を考慮の上総合的に判断して法20条の保護を与える必要のない程度に悪質であって、予告をさせることがその事由と比較して均衡を失するようなものを言う(昭23・11・11基発1637、昭31・3・1基発111)とされています。

具体的に認定すべき事由として例示されているものに、
「原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取・横領・障害等刑法犯に該当する行為」(前掲・通達)
が挙げられています。

以上から、本ケースの場合には、解雇予告除外認定を得ることで即時解雇することができることになります。